猫に狂犬病ワクチンを打たなくていい理由は?ひっかかれても大丈夫?

猫に狂犬病ワクチンを打たなくてもいい理由は? 病気・症状
猫村
こんにちは。獣医師の猫村(@chata_nekomura)です。

猫って狂犬病ワクチン必要ないんだっけ?

猫を飼っているとふと考えることがありますよね。

また、野良猫に噛まれたりひっかかれた場合も、

猫から狂犬病ってうつらないの!?

と心配になったりしますよね。

「犬」という字が入っているため犬だけの病気だと思われがちですが、実は猫も感染する狂犬病。

この記事では、猫の狂犬病の

  • 発生国(日本はある?)
  • 犬猫以外の感染動物は?
  • 症状
  • 潜伏期間
  • 治療法
  • 死亡率
  • 猫に噛まれたりひっかかれたりした場合どうすればいい?
  • ワクチン接種の必要性
  • 犬と猫での違い
  • 人間に感染して死亡した事例

などを、動画を交えながら解説していきます。

チャタ
動画はけっこうショッキングぅ。

猫も狂犬病に感染する!

猫も狂犬病に感染する

狂犬病といえば犬のイメージが強いですが、猫も狂犬病ウイルスに感染します。

チャタ
オイラにもうつるのか。

さらに、狂犬病ウイルスはそれ以外の動物にも幅広く感染するかなりやっかいな病気なんです。

犬猫以外ではどんな動物が感染する?

世界各地の狂犬病媒介動物

こちらは厚労省の発表しているデータですが、世界中どの地域でも同じような動物が感染源になっているのがわかります。

基本的に狂犬病は人を含めたすべての哺乳類が感染・発病する感染症ですが、図のように、主に感染源となるのは

  • キツネ
  • オオカミ
  • コヨーテ
  • コウモリ
  • アライグマ
  • スカンク
  • マングース
  • ジャッカル

などです。

ちなみに日本では2000年から狂犬病の検疫対象動物として、犬の他に猫、アライグマ、キツネ、スカンクが追加されています。

猫村
国家試験では「いー(犬)ねー(猫)荒い(アライグマ)キ(キツネ)ス(スカンク)」と覚えました。
チャタ
イーネーアライキス(棒)

狂犬病の発生国。日本は大丈夫?

狂犬病の発生状況

こちらも同じく厚労省のデータなのですが、見ての通り清浄国(狂犬病の発生のない国)は

  • 日本
  • オーストラリア
  • ニュージーランド
  • アイスランド
  • スウェーデン
  • アイルランド
  • ハワイ
  • グアム
  • フィジー
  • ノルウェーの一部
  • 英国の一部

(2016.6.28時点)

など一部の地域に限られ、アメリカ、アジア(タイ、フィリピン、カンボジア、最近ではマレーシアや台湾なども)、ヨーロッパ(フランスなど)と、世界中で発生が見られています。

また、このうちわかっているだけでも年間約55,000人が死亡しており、そのほとんどがアジアとアフリカ地域に集中しています。

一方日本では1957年を最後に狂犬病を根絶しており、国内では狂犬病の心配は今のところありません。

チャタ
あんしーーーーーーーん。

猫の狂犬病の症状は?

猫の狂犬病の症状

では次に、

猫が狂犬病を発症したらどうなるのか?

というところについて説明していきます。

症状としては、「前駆期(ぜんくき)」という共通の初期症状があった後、約85%は「狂躁型」約15%は「麻痺型」という病型に進みます。

【前駆期】

(1~2日)

  • 人気のない場所に隠れる
  • 食欲不振
  • 情緒不安定

【狂躁型(約85%)】

(2~4日)

  • 反射機能が亢進(神経症状が出る)
  • 顔つきが険しくなる
  • 全身をビクビクさせる(攣縮)
  • 震える
  • 食べ物以外を口にする
  • しゃがれ声になる
  • よだれを流す
  • 常に興奮状態

↓↓↓

(1~2日)

  • 口を開けっぱなし
  • 栄養失調
  • 脱水
  • 意識不明(麻痺状態)

↓↓↓

死亡

【麻痺型(約15%)】

(3~6日)

麻痺状態が続く

↓↓↓

死亡

となります。

↓【動画】狂犬病を発症した猫↓

ほとんどの猫はこのような「狂躁型」というタイプを発症し、神経過敏になるなど何らかの行動異常を見せますが、総じて狂暴化します。

また狂犬病ウイルスは唾液中に排出されるため、この攻撃的な時期に噛まれることで唾液から傷口へと感染が広がります。

猫の狂犬病の潜伏期間は?

狂犬病の潜伏期間は1週間から1年以上と個体差がありますが、平均して感染後1ヶ月くらいで発症します。

猫の狂犬病の治療法はある?死亡率は?

もしも猫が感染動物に噛まれたり、狂犬病を発症してしまった場合は、治療は行わずに安楽死処置を行います。

というのも、狂犬病は発症するとほぼ100%死亡する極めて危険な病気であり、さらに人にも感染する人獣共通感染症でもあるため、発症後の治療法がない現状では、対策としては感染源となる動物を殺処分する他ないんです。

チャタ
それくらい死亡率100%はマジやばい。

猫に噛まれた場合どうしたらいい?

日本では野犬は減りましたが野良猫はまだまだ見かけますよね。

かわいいなーと思い触っていたら突然噛まれたり、引っかかれたりすることもあるかと思います。

この場合狂犬病はどうなのか?と心配されるでしょうが、国内の場合はまず心配ないと言っていいでしょう。

猫村
ただし猫ひっかき病など他の感染症の可能性はあるのでそこのところは要注意。

しかしもしも海外で、しかも狂犬病発生国で犬や猫に噛まれてしまった場合は、迅速な行動が必要です。

この対応が早ければ早いほど発症の可能性を低くすることができるので、海外に行かれる方はぜひ以下の処置を覚えておいてください。

  1. すぐに噛まれた傷口を流水で十分に洗い流し、あればアルコールなどで消毒する
  2. 病院に行き狂犬病ワクチンを接種。その後3、7、14、30、90日後と、計6回のワクチン接種を行う

これば暴露後免疫(ばくろごめんえき)と言って、噛まれた後でも効果があるワクチンプログラムです。

猫村
噛まれたとしても、発症させなければいいってことだよ。

また、渡航先が狂犬病の蔓延国であることがわかっていれば、渡航前にワクチンを打っておくとさらに安心です。

猫と犬の狂犬病の違いは?

では次に、

犬と猫の狂犬病の違いはどこにあるのか?

というところについて解説していきます。

犬と猫の狂犬病の症状の違い

実は犬も猫も症状・潜伏期間ともにほぼ違いはありません。

チャタ
歯をむき出しにできる分犬の方が顔がこわいと思う。

↓【動画】犬の狂犬病↓

ちなみに他の感染動物についても症状はほぼ同じですが、については麻痺型が比較的多いとされています。

↓【動画】狂犬病を発症した牛↓(症状が出ている牛の様子は1分22秒辺りから)

チャタ
BGMコワすぎだっつーの。

猫は狂犬病の予防接種義務はない

さて、日本には狂犬病予防法という法律があるんですが、その中で年1回の予防接種を義務付けられているのは犬だけです。

実は狂犬病は色んな動物に感染する病気ではあるものの、国内では犬以外ワクチンの接種義務はないんです。

ではその理由は一体何なのでしょうか。

なんで猫は狂犬病のワクチンを打たなくていいの?

チャタ
なんで?うつるのに。

その理由としては諸説ありますが、

  1. 日本は犬へのワクチン接種のみで過去に狂犬病を制圧した実績があるから、今さら猫に打つ必要がない。
  2. 狂犬病を発症した犬は人を噛みながらウロウロと動き回って感染を拡げるが、猫は犬ほど咬傷事故を起こさない。

と、経験的な理由と疫学的な理由とが考えられています。

(世界保健機構によると、99%は犬に噛まれたことが原因で感染しているとされています。)

また猫を今さら接種義務の対象にしたところで、現在猫は室内飼いが主流となっているため、必要ないと思われる飼い主も多いことでしょう。

チャタ
「今さら」感があるよね。

猫にワクチンを打つ場合とは?

猫に狂犬病ワクチンを打つ場合

ただし、猫に狂犬病のワクチン接種が必要になる場合もあります。

それは、猫と一緒に海外に渡航するとき。

具体的には、

【日本を出国するときの条件】

  • 狂犬病の検査
  • 輸出検疫証明書の交付

【相手国に入国するための条件(例)】

  • マイクロチップの装着
  • 狂犬病の予防接種
  • 猫白血病などの予防接種
  • 寄生虫の駆虫薬投与
  • 血液検査
  • ………
  • ……

などなど、渡航先によって入国条件が異なります。

(詳しくは動物検疫所のHPに記載。)

猫の狂犬病ワクチンの費用はいくら?

実は猫に打つ狂犬病ワクチンは犬と一緒のものです。

狂犬病ワクチンの説明書には

「犬及び猫の狂犬病の予防」

「犬及び猫の皮下または筋肉内に1mlを注射する」

と書かれており、もともと猫にも打っていいものなんです。

また注射する量も犬と同じなので、おそらく3000円前後で値段設定をされてる動物病院が多いんじゃないかなと思います。

ただし、英語での証明書などの発行が必要になる場合もあるので、発行手数料などがかかる場合もあるでしょう。

チャタ
係留期間が長い国もあるし、海外行くのはけっこう大変。

猫から人に狂犬病が感染した事例

では最後に、実際に猫から人に狂犬病が感染した事例について紹介していきます。

イギリス人男性が猫にかまれて死亡

最近では、2018年11月にイギリス人男性が訪問先のモロッコで猫に噛まれて狂犬病に感染し、死亡する事件が起きています。

イギリス自体は犬や猫からの狂犬病の感染は100年以上の間確認されていませんが、こういった海外で感染して発症する事例というのは2000年以降で7人目ということです。

コロンビアの20歳女子大生が飼いネコに噛まれて死亡

2012年、南米コロンビアで大学に通う20歳の女性が飼いネコに噛まれ、狂犬病を発症して死亡しています。

チャタ
え、飼いネコ?

カリフォルニアで8歳女児が野良猫から感染

2011年、カリフォルニアで救急病院に搬送されてきた8歳女児を検査したところ、狂犬病と確定。

女児の通う学校には数匹の野良猫がおり、女児が発症前に引っかき傷を負っていたことから、野良猫による感染が疑われました。

女児は幸いにも暴露後免疫が功を奏して、なんと37日後に退院したとのことです。

チャタ
暴露後免疫SUGEEEEEEEE。

まとめ

猫の狂犬病まとめ

今回の記事をまとめると、

  • 狂犬病ウイルスは犬だけではなく、猫や人を含めたすべての哺乳類に感染する
  • 日本は清浄国だが、狂犬病は今も世界中で発生しており、死者も多数出ている
  • 猫が狂犬病を発症すると、多くは狂躁型の症状を呈した後、ほぼ100%死亡する
  • 猫の狂犬病の発症後の治療法はなく、安楽死処置がとられる
  • 猫に手を噛まれたり引っかかれたり舐められたりした場合、日本なら特に心配はないが、海外の場合は即刻処置すべし(暴露後免疫)
  • 犬も猫も狂犬病による症状にほぼ違いはなし
  • 猫は狂犬病の予防接種義務はない(狂犬病への感染は99%犬が原因だから)
  • 海外への渡航時は猫も狂犬病ワクチン接種が必要になる(ワクチン自体は大体3千円くらい)
チャタ
なるほどなるほど。日本は安全だニャ。
猫村
ただ、日本では特に気にしないことでも海外では危険な場合もあるから、渡航先では野良犬や野良猫、野生動物には近づかないようにしてね。

最後までお読みいただきありがとうございました。