【獣医が解説】猫の歯周病治療で臭いよだれは改善する?全身麻酔は必要?

病気・症状
猫村
こんにちは。獣医師の猫村(@chata_nekomura)です。

最近猫のよだれがひどくなってきてにおいもクサい。

でも、やっぱり治療には全身麻酔が必要なの?

とお悩みのあなた。

猫のクサいよだれの代表的な原因の一つに「歯周病」がありますが、

改善するにはやっぱり全身麻酔が必要になるのか?麻酔事故はないのか?というところが一番心配になりますよね。

そこで今回この記事では、そもそもの「歯周病って何?」というところから始めて解決策までを知っていただくために、

  • 猫の歯周病ってどんな状態?歯肉炎と同じ意味?
  • 歯周病の犯人は?歯垢と歯石の違いは何?
  • 歯周病になりやすい猫の生活習慣がある?
  • 同居猫にうつったりしない?
  • 歯周病の治療の種類は?
  • 全身麻酔は絶対に必要?それとも無麻酔で治療できることもある?
  • 費用はどのくらいかかるの?
  • 予防法は?家でのケアも必要?

といった猫の歯周病についてをまるっと解説し、あなたのお悩みを解決していきたいと思います。

チャタ
必殺!『臭い息』ハァ~~~。
猫村
モルボルは関係ありません。

猫の歯周病はどんな症状?歯肉炎とは同じ意味?

猫の歯周病の症状

まず「歯肉炎」とは歯肉のみに炎症が起きている状態をいい、「歯周炎」とは歯肉・歯根膜・歯槽骨・セメント質など歯周組織に炎症や破壊などのトラブルが起きている状態のことで、これらをまとめて歯周病と呼びます。

つまり、

歯肉炎は歯周病の初期症状で、進行すると歯周炎になる

と思っていただけたらいいです。

ただ、ちまたでは歯肉炎も歯周炎も歯周病もあまり区別されることなく使われていたり、意識して使っている人もそんなにいないと思うので、このあたりはあまり意識しなくて大丈夫です。

猫村
「歯肉炎とどう違うの?」と聞かれることもあるので、とりあえず違いを先に説明してみました。
チャタ
どっちでもいッス。それより早く症状が知りたいッス。

猫の歯周病で見られる症状としては、

【初期】

  • 歯ぐき(歯肉)の赤み、軽い腫れ

【進行中】

  • よだれ
  • 口臭
  • 歯ぐきが赤く腫れる、出血
  • 食欲低下(口が痛くて食べるのを嫌がる)

【末期】

  • くしゃみ
  • 鼻水(または鼻から膿)
  • あごの骨折
  • 歯が抜け落ちる
  • 嘔吐
チャタ
末期で重症になるとなんでくしゃみとか骨折とかになるわけ?
猫村
菌が歯の根元から鼻までトンネルを作って、鼻炎症状を起こしちゃうんだよ。骨を破壊しながら穴を作っちゃうから、あごが骨折しやすくなるんだよね。
チャタ
恐ろしすぎるぜ歯周病菌。

ですので、

最近猫のヨダレがくさいな。

と思ったら歯周病が進行している可能性もあるので、その場合は重症になる前に処置をしないといけません。

歯周病の犯人は?歯垢(しこう)と歯石の違いは何?

歯周病を引き起こす犯人は細菌です。

チャタ
だろうね。ってか言ってたよね。

はい。というわけで、もう少し詳しく説明していきますね。

この細菌は嫌気性菌といって生きるために酸素が必要ない細菌で、この細菌が大量に塊になって歯にくっついたものが歯垢(プラーク)と言われているものです。

チャタ
歯垢は細菌のかたまりなのか。

この歯垢については歯磨きをすれば取れますが、放って置くとここにカルシウムやリンなどのミネラルがくっつき、歯石となります。

そしていったん歯石となってしまうと、その名の通り石のように硬いため普通の歯磨きでは取れなくなってしまいます。

猫村
歯石の表面はザラザラなので、そこにさらに歯垢が付きやすくなります。

ということで、

歯磨きをしない

歯垢(細菌の塊=プラーク)が歯につく

歯垢が歯石に変わる

歯石の上にさらに歯垢がつく

歯石がどんどん大きくなっていく

と、歯磨きをしないと歯がどんどん細菌まみれになっていくという悪循環ができてしまいます。

歯周病になりやすい猫の特徴

歯周病になりやすい猫の特徴とは?

では、歯周病になりやすい猫とは?

ということなんですが、歯垢や歯石が付きやすい猫には次のような特徴があります。

  • 食事はドライではなく、主にウェットフード(缶詰タイプ)を食べている
  • 猫カリシウイルス(FCV)やいわゆる猫エイズ(FIV)などのウイルス性疾患に感染し、免疫が落ちている状態である
  • 高齢である
  • 歯磨きなど口内の手入れを一度もされたことがない

などなど、年齢や生活環境の影響も大きいようです。

中には生後1年未満の子猫でも若年性歯肉炎になることもありますが、やはり年を重ねた分歯石もどんどん溜まってくるため、高齢猫に歯周病は多いです。

歯周病は他の猫に感染する?

歯周病は他の猫に感染する?

同居猫がいる場合、歯周病が他の猫にうつらないかと心配になりますよね。

チャタ
安心してください。うつりませんよ。

ただしウイルス疾患などの感染症にかかって免疫が低下して歯周病になっている場合はウイルス自体は感染するので、他の子と接触しないように隔離するなどの対策が必要になってきます。

歯周病の治療の種類は?全身麻酔は絶対に必要?それとも無麻酔で治療できることもある?

猫の全身麻酔

猫の歯周病を治してあげたくて動物病院につれてくる飼い主さんでも、いざ全身麻酔ですとなると躊躇する方も多いです。

やっぱり麻酔に関しては病院側も絶対に安全とは言い切れない部分もある(というか言い切ることはできない)ので、心配になりますよね。

ただ、ここは結論から言うと

歯周病の処置をきちんとする場合、全身麻酔が必要な場合が多いです。

…というか全身麻酔下での処置をした方が、口臭が減ったりよだれがなくなったりなどは目に見えて効果が高いです。

軽い歯肉炎の場合はおうちで丁寧に歯磨きを続けることで治まる場合もありますが、歯周炎まで進んでしまうと歯周ポケットを含む歯の表面から歯垢・歯石を除去したり、症状が進んでいる場合は抜歯が必要な場合もあります。

そうなってくると、やはり処置効果を出すためにはどうしても麻酔が必要になってきます。

猫村
人の場合は「あーん」て口開けてもらえば処置できるけど、猫はもちろんそんなことしてくれないからね。
チャタ
あーん。
猫村
……。(君は特別なんだよチャタ。)

というわけで、歯周病処置の種類はほぼ一択。

動物病院
麻酔をかけて歯のクリーニング。必要があれば抜歯も。

ただ、かなりの高齢で麻酔に耐えられないかもしれない場合や、腎不全など腎臓や肝臓に基礎疾患がある場合には麻酔がかけられないこともあるので、そういった場合には対症療法になります。

例えば、痛みがある場合には鎮痛薬を投与したり、

歯石がひどくて歯肉を傷つけているような場合はハンドスケーラー(歯科器具)で取れるところだけ歯石をとって様子見したり、

よだれがひどい場合にはその都度拭って口周りが汚れないようにしてあげたり、

歯磨きを嫌がる子にはデンタルジェルを塗ってあげたり、とにかくできる限りで問題に対処してあげるということです。

また最近では無麻酔で歯の処置をすることを売りにしているサロンのようなところもありますが、動物病院ではないため

  • ペットが暴れて歯が折れる
  • 細菌が傷口から血管内に入り全身に回って敗血症を起こす
  • 細菌を吸い込んで誤嚥性肺炎を引き起こす

といった危険性もあり、細菌に対する処置などもしっかりされていないため、おすすめしません。

猫の歯周病の治療費はいくら?

大体ですが、

  • 歯磨き指導や抗生剤の処方だけなどの場合は数千円~1万円
  • 全身麻酔下で予防的な処置の場合は3万~5万円
  • 抜歯など重度の処置の場合は5万~10万円

程度を目安に考えてもいいのかなと思います。

(参考:犬・猫の診療料金実態調査

ただし手術料金などについては各動物病院でかなり違うものでもあるので、そのあたりは実際に担当獣医師に聞いてみるといいでしょう。

歯周病の治療法!家でのケアも必要?

猫の歯周病予防には家での歯磨きが大切

歯周病を予防したり、また病院での処置後の状態を維持するためには、おうちでのケアは必須です。

そして家での予防法で一番大切なのが、歯ブラシによる歯垢の除去です。

デンタル製品には

  • ペースト
  • デンタルジェル
  • デンタルスプレー
  • 歯科用おもちゃ
  • 歯科用おやつ

など色々ありますが、どれも補助的なものとして使っていただき、基本的にはまず歯ブラシを使った歯磨きをしていただけたらと思います。

また、指につけるタイプの歯ブラシは毛足が短く太いため、歯周ポケットの掃除には向いてません。

猫村
猫の歯磨きの仕方については長くなりそうなので、また別で詳しくご紹介させていただきますね。

では最後に、今回詳しくご紹介したのは歯周病によるよだれについてでしたが、猫がよだれを垂らす原因には次のようなものもありますので、一応頭に入れておくと今後のためにいいかと思いますのでご紹介しておきます。

(おまけ)猫のよだれが出るその他の原因

猫がよだれを出す原因として、歯周病以外には次のようなものがあります。

口内炎

実は犬と比べて猫は口内炎ができることが多いんです。

よだれに加え、最近ごはん食べようとしないなーとか、口臭がするなーと思って動物病院に連れて来ると口内炎を発見ということもよくあります。

詳しくはこちらの記事をご覧いただけたらと思いますが、重度だったり何度も繰り返す口内炎には抜歯が効果的な場合も多くあります。

→猫の口内炎は完治する?

口腔内の腫瘍

いわゆる「がん」が口腔内にできてよだれを垂らしていることがあります。

猫で多いのは扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)といって、舌や歯ぐきなどにしこりができてただれたような状態になり、出血を伴うネバッとしたよだれを出すことがあります。

異物の誤飲

猫の異物誤飲

魚の骨が喉に刺さっていたり、味覚に刺激のあるものや中毒を起こす植物などを誤飲してしまった場合、血の混じったよだれや泡状のよだれを垂らすことがあります。

詳しくはこちらの記事を参考にしていただけたらと思いますが、猫の異物誤飲も動物病院ではよく見るものなので、生活環境に注意してあげる必要があります。

猫がひもやビニールを誤飲したら即病院?様子見できる?

チャタ
特にひもはキケーン。

ストレス

ストレスでよだれを垂らす場合もあり、特に動物病院ではよく見かける光景です。

猫村
キャリーの中ですでにタラーっとしてる子もいれば、注射で保定されてる時にタラーっとする子もいたり。悲しいかな、猫は病院自体がストレスなんだよね。
チャタ
タリー。
猫村
……。(それは違うし猫は口開けて寝ないよチャタ。)

骨折

事故や病気で顎の骨が折れている場合、痛くて口が閉じられないためよだれを出すことがあります。

この場合緊急で治療が必要です。

熱中症

熱中症で体温が上がると呼吸が早くなり、ハッハッとあえぐような口呼吸になりよだれを垂らします。

こちらも緊急の対処が必要で、すぐに涼しい場所で体を冷やしてあげる必要があります。

まとめ

猫の歯周病まとめ

以上をまとめると、

  • 猫の歯周病の犯人は細菌で、この細菌の塊が歯垢(プラーク)となって歯にくっつき、進行すると歯垢から歯石となって歯ブラシでは取れなくなる
  • 高齢猫や免疫の落ちた猫で歯周病を発症することが多いが、他の猫にうつったりはしない
  • 軽い歯肉炎以外の場合、歯周病の治療にはほぼ麻酔が必要
  • 何よりおうちでのケアが大切

ということでした。

歯周病対策は治療よりも予防が大切です。

愛猫の出す歯周病のサイン(よだれとか口臭とか)に注意し、できれば毎日の歯磨きで口内のチェックをして、ぜひとも猫の歯の健康を守ってあげてくださいね。

もし歯周病になったとしても、できるだけ早期に気づいてあげることで歯を温存したまま進行を抑えることもできるので。

最後までお読みいただきありがとうございました。