【獣医が解説】猫のフィラリアの症状と治療法は?室内飼いでも予防薬は必要?

猫のフィラリア症の治療・予防法 病気・症状
猫村
こんにちは。獣医師の猫村(@chata_nekomura)です。

うちの子完全室内飼いなんだけど、猫のフィラリア予防薬って本当に必要なの?

と、猫のフィラリア予防に関して迷っているあなた。

もちろん予防が必要ならされるでしょうが、体のことを考えると必要ないなら余計な薬は使いたくないですよね。

チャタ
その気持ち大切。

でも、ネットをウロウロしてみてもいろんな情報があって結局わからない…。

という状態になっているあなたのために、今回はその迷いを断ち切るべくこちらの記事を作成しました。

ただしその解決策を知る前に、猫のフィラリア症のそもそもの原因から予防法まで知っておいてもらいたいので、

  • フィラリアってどんな虫?寿命や感染経路は?
  • 犬の病気ってイメージだけど、他の動物もかかるの?
  • 猫のフィラリア症の症状は?死亡率は高い?
  • かかったらどんな検査や治療をするの?
  • どんな予防薬がある?値段は?
  • 予防薬に副作用はあるの?
  • 時期は?いつからいつまで予防すればいい?
  • 予防接種と同時に予防薬も使っていい?
  • 完全室内飼いの猫でも予防は必要なの?

と、猫のフィラリア症のすべてをまるっと解説していきつつ、あなたのお悩みも解決していきたいと思います!

チャタ
期待しとるで。

フィラリアってどんな虫?寿命は長い?

フィラリア症は、正式には「犬糸状虫症」といい、犬糸状虫(フィラリア)という寄生虫が肺動脈や心臓などに寄生して循環器障害や呼吸器症状などを起こす病気のことです。

この寄生虫は犬の体の中で最も成長しやすいため、猫に感染できたとしてもほとんどは成虫になる前に死滅するものと考えられています。

ちなみに猫糸状虫という虫はおらず、犬に感染するのも猫に感染するのもすべて「犬糸状虫」で、犬でも猫でも病名は「犬糸状虫症」です。

チャタ
猫なのに犬糸状虫症。
猫村
「フィラリア症」って言えば犬猫どっちでも違和感ないんだけどね。

この犬糸状虫(フィラリア)ですが、次のような特徴をもっています。

フィラリアの特徴
  • そうめんのような乳白色の細長い虫
  • 成虫は20~30cmくらい
  • オスとメスがいる
  • 犬の体が一番寄生しやすい(成長しやすい)
  • 幼虫から成虫まで5段階のステップを踏んで成長する
  • 成長するには蚊の助け(吸血)が必要
  • 成虫の寿命は5~6年
  • ミクロフィラリア(フィラリアの赤ちゃん)の寿命は2~3年

と、こんな特徴をもつ虫なんですが、どうやって成長していくかというと、

フィラリアの育ち方
  1. 成虫は肺動脈や心臓に寄生して、血液中にミクロフィラリア(フィラリアの赤ちゃん)を産み出す
  2. ミクロフィラリアは吸血されて蚊の体内に取り込まれ、蚊の中で第3期の幼虫まで成長
  3. 成長した幼虫は蚊の吸口のところに移動し、蚊が次に犬の血を吸うときに皮膚から侵入し、感染
  4. 第3期の幼虫は犬の皮下や筋肉などで成長し、10日くらいで脱皮して第4期の幼虫に成長
  5. さらに2~3ヶ月後にもう一度脱皮し、第5期の幼虫となる
  6. 第5期幼虫は血管に入り肺動脈に移動して、感染後約半年で成虫になる
  7. ①に戻る

と、このように主に犬↔蚊の間で感染を繰り返して成長していくんですね。

またフィラリアを媒介する蚊の種類もけっこう多く、ヒトスジシマカやアカイエカ、トウゴウヤブカなど16種類ほどもいるようです。

猫への感染経路は?

フィラリアの猫への感染経路は?

フィラリアは猫の体内では成長しにくいと言いましたが、感染はします。

猫への感染経路も犬と同じで、上の「フィラリアの育ち方」の③番の部分で感染が成立します。

ただし猫の場合は、感染後にフィラリアの幼虫が第4期や第5期までは成長できたとしても、成虫にまで育つ数は少ないと考えられています。

他にはどんな動物が感染するの?

フィラリアに感染する動物

フィラリアは主にイヌ科の他、ネコ科やクマ科など食肉目科の動物にも感染します。

猫村
ペットだと他にフェレットにも感染するよ。

ちなみに糸状虫にも色々と種類があって人に感染するものもあるんですが、犬糸状虫は人間には感染しません。

チャタ
人には人の、糸状虫。

猫のフィラリア症の症状は?

猫がフィラリアに感染すると、

  • 呼吸困難
  • 食欲不振
  • 吐き気・嘔吐
  • 衰弱
  • ほとんど症状を示さず急死

などの症状が見られます。

フィラリアが成虫になる確率は犬に比べて低いのですが、成虫が寄生した場合猫は犬に比べて心臓が小さいため、少数でも重症化しやすくなります。

また、猫の場合は体内から虫がいなくなっても症状だけは残るといったこともあります。

死亡率はどのくらい?

上記のように、

症状が特にない健康に見える猫でも突然急死

という例もあるので、原因不明の突然死などは一部にはフィラリアが関与している可能性も考えられます。

ですが、すべての事例で解剖して死因を解析しているわけではないため、その死亡率については明確ではありません。

ただし海外の調査では、フィラリアの成虫が寄生した猫で、呼吸困難などの治療中に死亡する割合は5頭中1頭という情報があるので、

成虫が寄生していて呼吸器症状などが出ている場合には死亡率はかなり高くなると思われます。

チャタ
ただまず成虫まで成長する割合が低いから、「5頭に1頭?死亡率20%超高ぇ!」ってわけでもないんだなこれが。

猫のフィラリア症の検査法は?

猫のフィラリア症の検査法

猫のフィラリア症の検査は

  • 血液検査(抗体検査、抗原検査)
  • 心臓の超音波(エコー)検査
  • レントゲン(X線)

などがありますが、これで確定診断できるか?というと、これがなかなか難しいところなんです。

というのも、

  • 成虫は寄生しているけどミクロフィラリアに対する抗体によりミクロフィラリアは死滅
  • 成虫の数が少ない
  • 成虫が未熟
  • オスまたはメスのどちらかだけ寄生
  • 感染時期により抗体検査が陽性→陰性になったり、陰性→陽性になったりする

などの理由から、検査をしても確実に原因を発見できるわけではなく、確定まではなかなか難しいところがあるんです。

猫村
猫はもちろん、獣医師的にもかなり悩ましい病気の一つなんです。

猫のフィラリア症の治療法は?

発咳や呼吸困難などの症状が出ている場合は、まずそちらに対処するためステロイドや気管支拡張剤などを組み合わせて使ったりします。

また症状が重度の場合は手術で物理的にフィラリアを取り除く方法もありますが、こちらは専用の器材が必要になるので、対処できる病院とできない病院があります。

猫村
心臓を切り開く大手術じゃなくて、血管から専用の細い器具を入れて虫体を取り出す「フィラリア吊り出し術」って方法だよ。
チャタ
おおお~~~釣れた釣れたーーーーッ!!
猫村
いやそういう釣りじゃなくて。いやでも似てるような。

また、駆虫薬や抗生剤など薬を使ってフィラリアを駆除していく方法もありますが、いずれにせよ症状が重篤な場合には予後不良となる場合が多いようです。

猫のフィラリア予防薬の種類と値段は?

猫のフィラリア症の薬の種類

現在猫のフィラリア予防薬として処方されるものとしては、

  • レボリューション
  • ブロードライン

の2つが主流かと思います。

どちらも皮膚に滴下するタイプですが、それぞれの特徴として、

レボリューションの効果
  • フィラリア
  • ノミ
  • ミミヒゼンダニ
  • 猫回虫
ブロードラインの効果
  • フィラリア
  • ノミ
  • マダニ
  • 猫回虫
  • 猫鉤虫
  • 瓜実条虫
  • 多包条虫

と、駆虫範囲がそれぞれ少しずつ違いますが、どちらが処方されるかは獣医師の判断(好み?)によります。

またどちらも価格は大体2000円前後と考えていいかと思いますが、どちらかというとブロードラインの方が駆虫範囲も広いため値段が高く、また体重によっても数百円ほど前後することが多いようです。

実は昔はカルドメックチュアブルというお肉タイプの食べる薬があったんですが、こちらがなくなった代わりにブロードラインが発売されたという経緯があるんです。

猫村
やっぱりフィラリア予防といえば犬がメインだから、犬の方にはまだチュアブルタイプがあるし、錠剤タイプの飲み薬も種類が色々あるんだよね。
チャタ
猫は選択肢が少ないニャー。

また、ノミダニ予防として有名な「フロントライン」や「フロントラインプラス」にはフィラリア予防効果はないので注意してくださいね。

フィラリア予防薬に副作用はある?

副作用はどちらの薬にもそれぞれあり、

レボリューションの副作用
  • 投薬した部分が一時的にハゲる
  • 舐めたらすごいヨダレが出る。または吐く
ブロードラインの副作用
  • 舐めたらめっちゃヨダレが出る
  • 投薬部位が一時的にハゲる・かゆくなる・赤くなる
  • 投薬したところの毛が変色する

などが報告されてますが、どれも一時的な症状なのでそんなに心配することもないようです。

一応レボリューションの方には滴下後に死亡した例なども記載されてましたが、これもレボリューションとの因果関係ははっきりとわかっていないものだったので、過剰に心配する必要もないと思います。

(ただそれでも会社として情報収集をしてネット上に記載してくれてるのは親切ですよね。)

予防薬の投与時期はいつからいつまで?

フィラリア予防薬はいつからいつまで必要か?

では「予防薬の投与は何月から始めたらいいのか?」ですが、

蚊が出始めた1ヶ月後から蚊がいなくなる1ヶ月後まで

が基本なので、大体平均して5月末から11月末くらいまでが投与時期となります。

ですが蚊の出る時期というのは地域によってかなり差があり、北海道は7~10月までしかいない地域もあったり、沖縄なんかは年中いたりもするので一概にこの時期だけという決まりはありません。

こちらの「全国 犬のフィラリア感染期間の目安」からお住まいの地域の蚊の活動時期を調べられるので、気になる方は参考にご覧くださいね。

また、フィラリア予防薬というのは実は感染自体を防ぐものではなく、感染してもその幼虫を成長させないことで病気の発現を防ぐものなので、蚊に刺された場合感染してる可能性もあるんです。

なので感染→駆除→感染→駆除と感染後の事後処理をするのがフィラリア予防薬の仕事なんです。

猫村
一般的にイメージされる予防薬とはちょっと仕組みが違うのです。

市販のフィラリア予防薬でもいい?

市販や通販などでネット上に出ている処方箋のいらない薬の使用はおすすめしません。

というのも、通販などで見かける薬には「蚊に刺されるのを防ぐ」ものであって、「フィラリアの成長を防ぐ」ものではないからです。

この場合、もし蚊に刺されて感染してしまったら、幼虫は駆虫されることなくそのまま成虫に成長してしまう可能性もありかなり危険です。

命に関わるものなのでフィラリア予防薬は必ず動物病院で購入したほうがいいですし、正規に処方される薬の方が効果も高いです。

猫村
あと、1シーズン分まとめて購入すると割引がある動物病院もけっこうあるしね。

ワクチン接種と同時に予防薬も使っていい?

ワクチンとフィラリア予防薬は同じ日に使っても特に問題はありませんが、もし時間がある場合は1日ずらして使ったほうがいいでしょう。

というのも、もしも副作用が現れた場合、ワクチンが合わなかったのか、それともフィラリア予防薬が合わなかったのか、一緒に使ってしまうと原因がわからなくなってしまうからです。

動物病院によっては同日にして全然問題ないよーというところもあるでしょうが、上記の理由から私は別日派です。

完全室内飼いの猫でも本当に予防は必要?

完全室内飼いの猫でもフィラリア予防薬は必要か?

ついにきました。ここが一番の悩みどころですよね。

ここからは私の個人的な考えも入ってきますので、絶対にこれが正しいというわけではありませんが、参考程度にご覧いただけると幸いです。

ネット上の情報では猫のフィラリア感染率は約10%、つまり10匹に1匹は感染していると言われており、確かにそのようなポスターもあったりするのですが、この数字は完全室内飼いの猫には当てはまらないと思っています。

というのも、この数字をとった元というのが「地域猫」と「外猫もしくは室内外で飼われている猫」を対象にしたものなので、完全室内飼いの猫とは蚊に晒される機会、つまり感染リスクが全然違うからです。

また、

  • 都心でフィラリア症の発生がほとんどない地域
  • 周りに野良犬や外飼いの犬を見かけない
  • 近所の犬の飼い主さんはフィラリア予防をきちんとしている(感じ)
  • そもそもあまり蚊がいない

といった生活環境の場合はそもそもフィラリアの生きていける環境ではないので、感染の機会自体がそんなにないものと考えられます。

さらに室内飼いの場合は飼い主と猫が一緒にいるわけなので、蚊に刺されるとしたら毛に覆われていない人間の方が刺されやすいはずです。

そしてさらにさらに、室内飼いの場合はノミに刺される可能性も低く、他の猫から寄生虫が感染する機会もないため、感染の心配もないのに体にとって異物である予防薬を使うのは気持ち的に気が引けますし、余計なコストと捉えることもできます。

またトドメとしてはブロードラインの説明書に

本剤はフィラリア予防又は消化管内寄生虫の駆除あるいはそのどちらも必要な地域で、ノミ又はマダニの寄生若しくは寄生リスクのある猫への使用が推奨される。

といった文言があり、地域によっては必要だよといったことが書かれています。

そういった様々な理由から、もし上記のような環境にいる場合は、完全室内飼いの猫に予防薬は必要ないと個人的には考えています。

チャタ
だよね。出だしからそうだと思ってた。

ただし、その反対、つまり

  • 家の周りに蚊が多い
  • フィラリア症が多い地域である
  • 近所に外飼いの犬がいる
  • フィラリアに無頓着な感じの飼い主さんが多い(感じ)

といった環境の場合はその地域でのフィラリアの生活環ができあがっていると考えられるので、感染期と思われる期間はフィラリア予防をしておいた方が無難でしょう。

また感染リスクが低い場合でも、自分の猫に万が一のことがあってはいけないと猫のためを思って予防を選択する場合、それはそれですごく立派なことだと思います。

つまり絶対予防が必要とか不要とかは猫の生活環境を知らない他人が決めることではなく、住んでいる地域の環境と感染リスクを考えて、必要か不要かはあなたもしくはその地域の獣医師が決めるのが妥当だと考えています。

そしてほとんどの獣医師がそうだとは思いますが、どんな環境であれ飼い主のあなたが望む場合は予防薬は処方されますし、反対する理由はありません。

猫村
そういった持論があるため私は一緒に住む高齢猫2匹に予防薬は投与していませんが、これが絶対に正しいというわけではありません。猫のことを考えて、あなたが決めていいんです。

まとめ

猫のフィラリア症のまとめ

猫のフィラリア症は感染するとなかなか確定診断というものができないやっかいな病気です。

住んでいる地域や周りの環境によっては予防薬の投与をしておいた方がいい場合もあるので、かかりつけの獣医師に相談してみてくださいね。

地域の犬の感染率はどうか、猫の感染例を見たことがあるか、先生は猫へのフィラリア予防薬の投与についてどう考えているか、などなど、気になることは色々聞いてみるといいですよ。

最後までお読みいただきありがとうございました。

(記事内参考資料)

獣医内科学

クリニックノートNo.55